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社史を楽しむ

 先日の二世会特別市で、大量の社史を購入しました。

 社史は、会社の歴史を記した本。たいていは非売品で、関係者だけに配られるもの。一般に流通しにくいものですから、珍しいといえば珍しいのですが、購入層が限られるため仕入れたからといって飛ぶように売れるってものではありません。あまり人気のない本ですから、これを落とした時には

 そんなモン仕入れて、どないすんねん!

 って先輩方のツッコミもありました (^_^;) でも、まぁごくたま~に売れないこともないですから、こういうのを仕入れるのも面白いかなって思っています。

 社史を読んでも退屈なものが多いですが、それでもパラパラと読んでいると、意外な発見があったりして面白いこともあります。たとえば、この前仕入れた本の中にあった「大阪瓦斯五十年史」。「瓦斯」って表記に時代を感じますね~。「ガス」って読みます。

 「大阪ガス」は、関西のガス会社。我が国のエネルギー政策ですとか、日本の経営史を研究するって人には、なかなか貴重な文献の一つになるかも。まぁそれはともかく、私が興味を持った部分。この本が出版された当時の、大阪ガスの定款が面白かったです。

第2条 当会社は、左の事業を営むことを目的とする。
 一、瓦斯の製造、供給及び販売。
 二、瓦斯副産物の製造、精製及び販売。
 三、瓦斯器具及び瓦斯計量器の製作並びに販売。

 
 定款には、会社の「目的」を定めることが必要です(絶対的記載事項といいます)。その会社が、どんな事業を営むのか。それが目的欄で、これは会社の登記にも記されることになっています。で、上に記した部分だけでは何の面白味もありません。ガス会社がガスやガス器具を販売するっていっても当たり前のことですから。

 でも、この次。

 四、医薬品、化学工業薬品及び化粧品の製造並びに販売。

 どうです? 大阪ガスが化粧品を販売している会社なんてイメージがありますか? こういう企業の意外な一面を発見するのも、社史の楽しみ方の一つかもしれません。

 ちなみに、現在の大阪ガス。ネットで確認したところ、定款は大幅に改定され、事業目的もぐんと増えています。化粧品の販売は事業目的から外れていますが、代わりに(?)不動産事業ですとか、料理教室ですとか、ぐんと事業規模が大きくなっています。どういう過程でその会社が成長していったのか。社史を読めば、その過程を知ることができて、なかなか楽しいものですよ。
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寄藤文平「絵と言葉の一研究」

 最近読んだ本。

 寄藤文平 「絵と言葉の一研究」(美術出版社)

 副題は、「『わかりやすい』デザインを考える」。デザイナーである著者が、
どんなふうくデザインを考えるのか。自己の体験も踏まえ、その思考過程を
分析した本。

 「研究」っていうと堅苦しい感じですが、でも難しい言葉づかいはなく、
ふんだんにイラストも用いて解説しているので、読みやすい本です。ただ、
帯書きで著者が、「正直、わからなくなってきました」って語っていること
からも分かるように、けっこう内容は深いものがあります。

 へぇ~、本職の人はこんなふうに考えてデザインしているんだ!

 そんな発見をさせてもらえる本でした。印象に残った言葉を、ちょっと
引用。

 ……
 水素と酸素が結合すると、水素とも酸素とも違うまったく別の性質のもの
になる。
 これとよく似たことが絵と言葉にもいえるように思う。絵と言葉は同じでは
ない。絵には絵の、言葉には言葉の性質がある。そして、絵と言葉がきちんと
結びつくと、絵でも言葉でもない「なんか変なもの」になるのだ。
 ……


 私はどっちかというと、「言葉」に頼る人間。自分の考えを表現するのに、
絵よりも言葉の方がスムーズにいくって感じています。だから、絵って
いうのは、言葉で説明するモノの補助的な役割って思っていました。

 でも絵と言葉を同時に見せられると、確かに、言葉だけを受け取った
時、絵だけを受け取った時と比べ、まったく違う印象を受けるような……。
それが、著者のいう「なんか変なもの」ってものの正体かどうかわかり
ませんが、絵と言葉の結びつきってのは、なかなか面白い研究テーマ
だと思いました。

 生活にあふれるさまざまなモノのデザインを自分なりに見直すキッカケ
になりそうな本。デザインの仕事を専門にされている方だけでなく、
一般の方にも楽しめる本だと思いますよ。

「将棋世界」1月号

 私は、趣味で将棋を指します。最近はなかなか実戦の機会がなく、
本や新聞を読んで現状の棋力(=将棋の実力のこと)を維持するので
精一杯。でも、何とかできる範囲での勉強はしています。

 将棋の勉強に役立つ雑誌が「将棋世界」。日本将棋連盟の発行する
将棋界の情報誌です。定跡講座やタイトル戦の動向、詰将棋など盛り
だくさんの内容。将棋を趣味とする人にはぜひ読んでもらいたい雑誌
です。

 私ももちろん、毎月欠かさず購読……のはずでしたが、2015年1月号
を買い損ねました。昨年末、慣れないブックフェアの準備や、市会の
出品、同業者の方のお手伝いなど色々あって書店に買いに行くことが
なかなかできなかったのです。

 で、年末。いっぱい本を買いだめたのに、将棋世界1月号を買い漏らす
というウッカリ。昨日は元日のため、近所の書店が営業していなかった
ので、今日訪れてみたら……アララ、1月号は姿を消し、2月号が書店に
並んでいました (^_^;)

 どうやら、店にも在庫はないみたい。売れ残り分は、さっさと返品して
しまったのでしょうね。一応、書店の方の話ですと、出版社に問い合わせて
取り寄せてみますってことでしたが、取り寄せに時間がかかるってこと。
それに、品切れの場合には諦めてください、とのこと。ま、しょうがない
ですね。。。

 ず~っと買い続けてきた雑誌を買い漏らすってのは、不愉快なこと。
こんなことがないように、毎月購読するって決めている雑誌は、
きちんと定期購読の手続をしておいた方がいいかもしれませんね。

ヴィノグラードフ クジミン「論理學入門」

 ヴィノグラードフ クジミン 「論理學入門」 

 西牟田久雄・野村良雄の訳で、青木文庫から出版されている本。「論理」
というものについて、小難しい議論を繰り広げている本です。読んでも、
ちっとも面白くありませんw

 何で、この本を紹介したかといいますと、人気小説「ビブリア古書堂の
事件手帖」の中で紹介されている本だから。ビブリア最新刊を紹介した
ついでに、ビブリアに関連するこの本も紹介しようって思ったわけ。
 私も、ビブリアを読んでこの本のことを知り、機会があったら読んで
みたいな~って思っていた本だったわけです。

 で、意外にも簡単にその機会は早くに訪れ、昨年買取った本の中に、
この本はありました。読んでみたのですが……う~ん、何ていうか……
ツマラナイ。。。分かりきったことを延々、難しい言葉で説明していたり、
かと思えば、

???????

 って、頭にクエスチョンマークがいくつも浮かぶようなことを、平気で
大前提として書いていたり……。たとえば、こんな記述があって驚き
ました。

 先進的なマルクス=レーニン主義理論と、レーニン=スターリンの事業は
正しいという意識によって武装されているソヴェト人は、外国の「科学」や
外交の代表と責任ある、かつ複雑な論争においていつも勝利者となって
いる。このことのはっきりした例は、国際的な会議や協議会でのソヴェト
代表のみごとな演説である。このような演説は、論議のまととなっている
問題の本質についての深い認識の模範であるばかりでなく、またおかし
がたい力をもった論理の模範でもある。……


 ソ連は崩壊し、冷戦は西側諸国の勝利に終わったというのが、歴史的
事実だと思うんですが……。まぁ、この本の出版当時はソ連も健在でした
し、そのあたりはツッコミ無用としても、それでも当時からソ連の代表が
論争でいつも勝っていたっていうのは、明らかな誇張。演説の上手・下手
だって、論理的整合性とは無関係です。ヒトラーは多くの人を魅了するほど、
演説が上手かったわけですが、今の時代で彼の主張を「正しい」と思う
人はほとんどいないでしょう。

 自分こそが正しく、他のものは間違っているという独善的な人間の書いた
本は、正直、あまりタメになるものとは思えません。それでも、論理学一般の
記述に関していえば、まぁ「入門」って名乗っているだけあって、学ぶところも
あるのかも。ところどころにある時代を感じさせる記述に目をつむれば、
論理学を学びたい人にとっては、有用な本かも知れません。

 絶版になっていますので、新刊書店では購入できません。学術系の文庫を
多く揃えている古書店を探せば、見つけやすい本だと思います。ご参考
までに……。

三上延「ビブリア古書堂の事件手帖」(6)

 最近読んだ本。

 三上延 「ビブリア古書堂の事件手帖」(6)

 人気作品の最新刊。年末に買いだめた本の中の1冊です。本にまつわる
謎を解き明かしていくって感じのミステリー。ビブリオミステリーっていうそう
です。

 各巻独立の構成にはなっていますが、6巻では、5巻で与えられた伏線を
もとに話が進んでいる部分もありますので、できれば最初から読み進めた
方が楽しめるかと思います。(で、さらに6巻のエピローグでは、おそらく
7巻につながっていくであろう伏線のようなものが与えられます)

 最新刊は、これまでの巻に比べ、ちょっとミステリーの要素が薄くなって
いるように感じました。しかも、「古書」に関する謎解きっていうよりも、
一般的なミステリーに近い感じ。これまでのファンの方には、少し消化不良
感の残る内容だったんじゃないでしょうか? 正直、私はちょっとガッカリ
でしたね。でも、作風を変えることで新規読者を獲得したいって思惑だった
のかもしれません。だとしたら、これぐらいがちょうどいいのかも。

 そういえば、この作品。数年前にドラマ化された時には、そのキャストに
賛否両論巻き起こりました。特に、主演女優。篠川栞子を演じる剛力彩芽
さんが、あまりにもイメージと違うって意見が多かったみたいです。

 作品の篠川栞子は、ロングヘアで内向的な性格。大して、剛力彩芽さんは
ショートヘアで活動的なイメージですから、なるほど、そういう意見が出る
のも、一理あります。

 でも、作品イメージに合わせて配役を選ぶってのも、もちろん重要なこと
でしょうけど、役者の個性で作品イメージを作り上げていくってのも大切
なこと。そういう意味では、あのドラマ、「イケてる」作品だったんじゃないか
って思っています。

 というのも、あのドラマを見て以降、私が「ビブリア~」を読み進める時には、
どうしても剛力彩芽さんのイメージで読んじゃうんです。栞子の母は、安田成美
さんのイメージですね。でも、主人公の五浦大輔は、AKIRAさんじゃなく、
あくまで自分を主人公に投影して読み進めるんですがwww

 それはともかく、第6巻。個人的には、もう少し古書のエピソードとかを織り
込んでもらってもよかったかなって思いますが、まぁそれなりに楽しめる
本にはなっていると思います。