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「全」の有無で大違い

 何巻にもわたる小説やコミック類、全集モノなどは、全巻揃えて
出品すれば気持ちいいものです。

 

 この文字を書けるかどうかで、商品としての値打は全く違ってきます。

 ××全集 全○○巻揃

 こんな感じで商品説明を書きこむのは、誇らしいものです(^^)

 文学全集などは、1巻でも歯抜けのところがあるとみっともないですし、
百科事典などは不揃いですとバラ売りするってわけにもいきません。
やっぱり、全巻揃いをまとめて販売するってのが理想ですね。

 バラ売りの方が1冊あたりの売上単価は高くなるので儲かるって考え方
もありますが、欲しい部分だけ買われて、残りはいつまでたっても売れない
って危険もありますので、私は揃っているモノをわざわざバラ売りしようって
気にはなりません。

 ある程度まで揃えても、どうしても最後の1巻が入手できず、仕方なく
不揃い商品ってことで、業者市で安く売り出すこともあります。揃って
いれば、ネットでそこそこの値段で売れるものでも、不揃いだとなかなか
売りにくいので、いつまでも保管場所を塞いでおくよりかは、安くても
早く処分してしまった方がいいって経営判断です。

 要するに、「全」って文字を書けるかどうかは、大きな違い。不揃いの
ものに「全」なんて文字を書いてしまったらクレームのもとですし、全巻
揃っているかどうかって判断は慎重にしなくちゃいけません。

 最近の全集モノですと、刊行前から全何巻の予定なのかって告知が
出ますし、巻末や帯にも全何巻なのかってことが書かれています。
しかし、それでも思いのほか評判が良かったりすると、全20巻の予定
だったものが21巻以降も出版されたり、「第2期」って形で出ていたり
しますので、油断はなりません(^_^;)

 海外の全集モノを翻訳したものも、要注意。海外での巻数と、日本での
出版巻数が一致しないこともあるみたいで、そんな場合は、海外版と
国内版の巻数の違いも意識しなくちゃいけません。

 ごく稀に、全集モノの刊行途中に出版社がつぶれてしまうってことも
あるみたいで、そうするとそのシリーズの「全巻揃」って幻ってことに
なりかねません。まぁ、それでも特別なルートで未刊行の本が出回ったり
するので、何だかんだと力技で揃えたりすることもあるんですがねwww

 「全」・・・この文字を書くには、それなりの苦労があるってお話でした。
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同じようでも・・・

 昨日の話の続き。

 ある本がA店では1,500円で売られていて、B店では1万円で売られている・・・
全国統一の価格で販売しなきゃいけない新刊書店と異なり、古書店の場合には、
こういうことが、よくあるものです。

 どういう本にどのくらいの値段をつけるかは、全て店主の裁量。どういった
値付けをするかで、その店の個性が出てくるものです。どこよりも安い値段を
つけて、お客さんに喜んでもらおうとするお店。いい本にはしっかりした値段を
つけて、お勧め本をアピールするお店……色々です。

 購入するお客さんの立場からすれば、いい本を手に入れたって喜んでいた
のに、別の店ではもっと安く売っていたってなれば、あまり感じのいいものじゃ
ありません。
 でも、そういう運不運というか、お店との相性というか、そういうものを楽しむ
のも、古書を買う時の魅力の一つ。 高い買い物をした! って残念がらず、
笑って受け止める心の余裕を持ってください m(__)m とはいうものの、 いくら
なんでも、1,500円と1万円じゃ極端だろって思いますがねwww

 同じ本なのに値段が極端に異なる場合……店主が相場を知らないってだけ
の場合もありますが、その本に対する店主の評価を金額で表現したって場合も
あります。高い値段を付けている店主は、その本をそれなりに評価しているって
わけ。「高いと思うなら、ウチで買ってくれなくていいよ!」って強気の経営姿勢を
アピールしているのかもしれません。

 それともう一つ。古本ゆえの原因があります。同じタイトルとはいえ、扱って
いるものは、全て古本。コンディションが1冊1冊異なるわけです。だから、

 ヨソは1万で売り出してるけど、ちょっと汚れているし、
そこまでは無理だな~


 って考えて、7,000~8,000円ぐらいにしたり。そういうことは、よくあります。
まぁ、それでも1万円で売っている本を、1,500円で売り出すってのは、
さすがにないと思いますが……(^_^;)

 要するに、古本は中古車と同じ1点もの。中古車を買うときだって、値段だけ
見て買うってことはないはず。走行距離だとか、事故歴だとか、キズの有無とか
……色んな要素を検討して、その車がその値段で売っていたら安いな~とか、
高いな~とか。同じ車種でも、状態によって値段が変わるのは当然ですよね?

 古本も同じ。同じタイトルの本でも、ヤケの程度、帯の有無、書込みや汚れの
状態、初版本かどうか……といった点が異なれば、値段も変わる。古本にも、
個性があるんです。
 
 だから古本を購入するときは、値段だけを見て即決せず、しっかりと状態を
判断した上で購入しないと、ガッカリするってこともあるのでご注意。ネット販売
や目録販売の場合には、実物が見られないのですから、説明書きをしっかり
読んで、後悔ない買い物をしてください。

苦い思い出

 ここ数日、サイン本の話をしていて、ふと思い出したこと。そう
いえば、私にはサイン色紙で忘れたい想い出がありました。恥ずか
しい過去。なかったことにしてしまいたい過去……。遠い忘却の彼方に
あったのですが、せっかく思い出してしまったので、告白します。

 私、 偽サイン買ってしまった ことあります!

 今から30年ほど昔、私の子供時代のことです。当時、「キン肉マン」
って漫画がアニメ化され大人気でした。キャラクターグッズも飛ぶように
売れ、もちろん私も好きだった子供の一人です。

 そんなある日、近所の遊園地で「キン肉マンショー」なるものが開かれ
るってことで、行ったことがあります。まぁごく普通のヒーローショー。
キン肉マンの着ぐるみを着た学生バイト(?)が、舞台の上で大活躍して、
悪者をやっつけるってだけのことです。

 いくら子供とはいえ、舞台の上の着ぐるみがキン肉マンの本物でないこと
ぐらい分かります(笑) 中に人が入っているってことも、もちろん分かっ
ていたはずです。要するに、ショーをショーとして楽しんでいただけ。

 なのに、どういうわけか、数十分のショーが終わると、周りの子供たちと
一緒に興奮! 熱狂の渦に包まれていました。

 「良い子のみんな、ボクのサインを販売しているから買ってくれ!」

 キン肉マンの熱演に心を捕まれていた私は、彼の言うまま、会場で
他の子供たちと一緒になって、そのサインを買いました(爆)

 その色紙には、しっかり「キン肉マン」って書かれていますw 売価
300円(当時)ってことも覚えています。

 何でこんなもの買ったんだろ? 雰囲気にのまれたってヤツかな。。。
漫画原作者の「ゆでたまご」の偽サインを買ってしまったっていうなら、
まだマシ。でも、よりによって「キン肉マン」のサインってwww

 当時は、こういったええ加減な商売が平気でまかり通っていたんですね。
それとも、今のヒーローショーでも、こんなのあるのかな? いくら子供
時代のこととはいえ、自分のアホさ加減に呆れますが、まぁこういう経験
をしたからか、私はあまりサイン本には興味を持たないようになりました。

サイン本であっても

 これまでサイン本の真贋の見極めなどをお話してきましたが、実は、
サイン本だからといって必ずしも高額なわけではありません。

 紛うかたなき本物のサインだったとしても、その著者にそこそこのネーム
バリューがないと誰も欲しがらないわけで、誰も欲しがらないってことは
売値もそんなに高くなりません。ロビンが自費出版して、全部に私のサインを
書き込んでも、誰も欲しがりませんよねwww

 こういったことは、需要と供給の関係。需要が小さければ、市場価値は落ち
るものなんです。あまり人気のない作家や学者の著書、自費出版といったもの
には、サイン本が出てきても正直なところ、あまり市場価値はありません。
むしろ「落書き」扱いされ、古本屋での買取額が減額される場合もあるかも(笑)

 そういえば、以前、業者市で面白いことがありました。ある俳優のサイン
本が出品されたのですが、皆さんの反応は芳しくありません。

「××のサインか~。いらんわ!!」・・・ってwww

 その俳優は有名な方ですし、恐らくサインも本物。でも、売れないって
判断をされてしまったので価格はそんなに上がりませんでした。この場合は、
その俳優に「人気がない」っていうよりも、そのサインが「売れない」って
判断をされたわけですが、結局その判断根拠は、お客さんの需要。欲しいって
思う人がいっぱいいれば、業者市でも値段は上がりますし、いなければ
サイン本でも値段はつきません。

 需要と供給の関係でいえば、供給過剰の場合にも価格は落ちます。人気
作家で、けっこうの部数を売り上げる人のサイン本でも、頻繁にサイン会を
開いたりする方のものですと、サイン本が市場に多く出回っていますから、
値段もそんなに上がりません。

 需要が小さいか、供給過剰か。いずれかの原因で、市場価格がさほど
高くない場合には、そもそもサイン本の真贋を判断する必要はありません。
だって「サイン」に価値はないわけですから。純粋に本の値段だけを
考えて値付けすればいいわけです。

 それに、サインの価値も変わります。今は人気作家でも、10年もすれば
誰も興味を持たないって人もいるでしょう。そんな場合、そのサイン本も
10年後にはほとんど無価値。

 市場価値の高いサイン本の数も少ないですし、その市場価値を長年に
わたって維持する本はもっと少ない。……ってことで、サイン本の真贋に
悩むってことは、普段の買取の中では滅多に起こらないことなんです。

サイン本の真贋 その3

 サイン本の真贋の判断方法、その3。筆跡を鑑定する。

 筆跡を鑑定するというと、かなり専門的な知識がいる
ように思われるかもしれません。でも、ごく初歩的な
レベルの鑑定でしたら、皆さんも実践することができます。
出来の悪い署名本でしたら、簡単に偽物であるってことを
見抜けるでしょう。

 もちろん筆跡鑑定の前提として、本物を見たことがある
ってのは大事。その本物の印象と比べて、今、目の前に
あるサインから受ける印象が同じものかどうなのか。これを
感じ取るわけです。

 って抽象的すぎますかね(^_^;) じゃあ、もう少し具体的に。

 まずは、全体のバランス。字そのもののバランスはもちろん、
字間や余白のバランスにも意識を向けます。人間が書くもの
ですから、サインも全く同じものって二つとありませんが、
それでも文字から受ける印象って似通うものです。ここに
違和感を感じるなら、偽物の可能性が大ですね。

 それと、筆の勢い。普段から書き慣れている人間と、それを
真似して書いた人間とでは、文字の勢いに差が生じます。どこ
となくぎこちない感じ、たどたどしい感じを受けたら、これも
偽物の可能性大って思ってください。

 他にも、真贋を見極める方法はいくつかありますが、ちょっと
専門的な知識が必要になる部分もあるので割愛。まぁこれまで
お話した点に注意すれば、かなりの部分で偽物は判別できるって
思いますよ。

 ファン心理としては、好きな作家のサイン本は欲しいもの。
「日本古書通信」2014年6月号には村上春樹の署名本の記事が
載っていましたが、その価格はなんと30万円以上!! まぁ
これは単にサイン本ってだけでなく、限定稀覯本だからって
いうのもその価格の根拠になっているみたいですので、偽造品
が出回る可能性は低いでしょうが、それにしてもファン心理って
すさまじい……。

 個人的に思うこと。高額な商品を買って飾っておきたいって
いうのは、コレクター心理としては共感できる部分もありますが、
やっぱりそれって特殊なこと。本は、読んでこそのものだと思い
ます。

 どうしても思い入れのある作家のサイン本が欲しい。そういう
気持ちを否定はしませんが、あまりに欲しがるファンの人が多い
と、業者も考えます。足元を見て高額で売りつけられたり、時には
偽物を売りつけられるってこともあるかも。好きな作家を応援する
気持ちは大事ですが、ほどほどを心掛けるようにしてください
……って、古本屋の立場としては、欲しがる人が多い方が嬉しいん
ですけどねwww