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竹内薫「不完全性定理とはなにか」

 知的好奇心をくすぐる本。

 竹内薫「不完全性定理とはなにか」(講談社ブルーバックス)

 正しいことでも、それを証明できるとは限らない・・・ザックリと説明すれば
ゲーデルの不完全性定理ってそういうこと。じゃあ、そのことをどうやって
証明するのかってことに、本書は取り組んでいます。

 新書なんでページ数はそれほどでもないですし、文体も平易です。しかし、
その内容は、すごく難解!! 専門に勉強した方以外は、一読した
だけでは全てを理解できるってことはないと思います。私も、読んでみたものの、
まだ何か頭の中がムズムズと痒く感じます(頭を洗っていないわけじゃありま
せん、普段使っていない脳細胞が運動したので筋肉痛を起こしたって感じ。
もちろん、例えばなしですが)。

 ただ・・・読んで完璧に理解できないまでも、全く理解できないってことも
ありません。なんとな~く、論理の流れを追うことぐらいはできるはず。もともと
扱っているテーマが難解なものなのですから、ある程度理論が複雑でややこしく
なっても、それは本の責任じゃありません。入門書としての本書は、十分、その
責務を果たしていると思いますよ。この本で興味を持った読者は、よりステップ
アップするために他の文献も目を通してみればいいということです。

 不完全性定理の難解性の原因について、筆者は視点を意識する必要がある
ということを挙げておられます。19世紀までの数学や科学は、視点によらず同じ
結果が出るって特徴があったけれど、20世紀に入ってからはそうはいかなくなった。
だからといって、「主観的」になったわけでもなく、客観の意味が変わったという
のです。

 視点の重要性を理解するのは大変だ。視点の移動は難しい。幼子は、
自分が知っていることと他人が知っていることの区別がつかない。お姉さんが
トイレに行っている間にお母さんが冷蔵庫のお菓子を戸棚に移してしまった。
そこにお姉さんが戻ってきて、冷蔵庫をあけて「あれ、お菓子がないよ」と叫ぶ。
幼子は、お姉さんの行動が理解できないから笑う。だって、お菓子は戸棚に
あるんだもん。なんでお姉さんは冷蔵庫を探しているんだろう。
 幼子は、自分の視点からの情報とお姉さんの視点からの情報の「変換」が
できないのだ。幼子は主観的な視点でしか世界をとらえることができない。
「お姉さんの視点では、お菓子が戸棚に移されたことはわからない」という
ことが理解できない。


 ありますよね、こういうこと。幼子に限らず、大人でも相手の立場、主張が理解
出来ない人っています。それほどまでに視点を変えて物事を見るってのは難しい
こと。不完全性定理にしろ、相対性理論、量子力学にしろ、20世紀科学の成果を
理解するには、この視点の変換が大事。そんな難しいことを要求するのですから、
やはりこの理論が難解なものであることに間違いはなさそうです。
 この本に取り組んでみようって方は、この視点移動を意識して読み進めて
ください。

 ちなみに、「正しいことでも、それを証明できるとは限らない」―ということは、
「正しいことは、証明できない」ということとは違います。証明できない場合も
あるってだけで、正しいこと全てが証明できないってわけではないのです。
また、「間違っていることならば、証明できる」ってことでもありません。正しい
とも、間違っているとも判断できないってことを意味します。ややこしいですが、
ゆっくり論理を追っていけば、ある程度は楽しめますので、専門外の方も、
ぜひ挑戦してみてください。

 ところで、この本で幾度も登場する「対角線論法」。私がこの論法のことを知った
のは、大学を卒業してからのことでした。その時の感動は今でも覚えています。
実に美しい証明なのです。言われてみれば、すごくシンプルで分かりやすい
論法なのですが、19世紀に入るまで誰もこの証明に気付かなかったというのが
驚きです。コロンブスの卵のようなものかもしれません。

 厳密な証明は、難解な数式を駆使するのかもしれませんが、私は専門外なので
それは知りません。でも、初歩的な証明は高校数学で十分理解できます。高校の
時に教わった「背理法」。あれの応用です。この本の中でも、対角線論法は
ミッチリ解説されています。その奇抜な発想を味わってみてください。

 なかなか一筋縄ではいかない本ですが、頭の体操を楽しむつもりで読んで
みてください。途中、分からなくなっても投げ出さないように。難しいテーマです
から、一気に全部を理解しようと焦るのは禁物ですよ。雰囲気を味わってみよう
って軽い気持ちで読むのがベストだと思います。
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