スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

松本謙治「古書の見方・買い方」

 先日、業者市でまとめ買いした本の中に、こんなのがありました。

 松本謙治「古書の見方・買い方」(東洋経済新報社)

 「古書」に関しての本なのに、「読み方」じゃなく「見方・買い方」とされて
いるのには、ワケがあります。この本、古書を買って儲けましょうって本
なのです。株や不動産を買うのと同じように、投資対象として古書を選び
ましょうって本。

 はしがきには、次のような記述があります。

 ・・・古書の値上がりは戦後一貫して続いており、ことにここ数年間の
それはすさまじい。しかも、こうした傾向はこれからもまだまだ続くとみる
のが妥当のようだ。わずかの資金で確実に利殖がはかれる古書投資も
財産づくりの一環として考えられるわけである。


 この本は、昭和49年の本。高度経済成長は終わっていますが、前年に
始まったオイルショックの影響で物価が狂乱的に上昇していた時期のもの
です。
 当時は紙資源が不足し、雑誌や新聞などのページ数が削減されたといい
ます。古書は紙の塊なわけですから、そりゃそんな時代だったら、最悪、
「資源」としての価値は見込めるってことで、価格も上昇するでしょうね。

 要するに、この本で書かれているように古書が投資対象になりえたのは、
特殊な事情があったから。今の時代には、まず通用しない理論でしょうね。
一般の投資家向け情報では、金相場や株価は頻繁に紹介されています。
でも、新聞の経済欄を読んでも、「本日の古書相場」なんてもの、載っては
いません。古書を投資の対象にしようってのは、今となっては、さすがに
ナンセンスです。

 この本では、やれ詩集はいいだの、川端康成の初版本がどうだのって
熱心に語っていますが、ほとんど見当違い。確かに、詩集や初版本に
高額な値段のつくものはありますが、そもそもそれを欲しがる人が少ない
のが現状。売るのに苦労するわけです。売れなきゃ、高額な古書価も
絵に描いた餅。ってことで、投資に成功するかどうかは、はなはだ怪しい
ハナシ。

 かつて、これらの本が投資材料となったのは、本当にその本を欲しがる
ファンの人以外に、これで一山当てようという投機目的の購入者も少な
からずいたから。要するに、「売り出せば、誰かが買ってくれるだろう」って
甘い期待が大前提の儲け話。バブル経済と同じ構造です。

 でも、バブルはいつかはじけるもの。古書価が右肩上がりに上がり続ける
ってことはありえなく、投資家が市場から去った時にバブルは終わります。
 今は、既に古書市場に、投資家はほとんどいません。せどりをしている
人はいますが、それも短期決戦のビジネス。高い本を買って、じっくり保有し、
値上がりしたところで売りに出す・・・なんて、呑気なことを考えている人は、
ほとんどいないでしょう。

 投資家が去って冷え切った市場なわけですから、古書価も高騰しようはず
がありません。でも、考えてみれば、これが本来の健全な市場の姿。本当に
その本が欲しい人に、適正な価格で届けられるようになったわけですから、
古本屋としては、値段が下がったと嘆くよりも、いいお客さんに巡り合える
チャンスが増えたって喜ぶべきでしょうね。

 「古書の見方・買い方」……古書で儲けようって人には、もはや何の参考にも
ならない本ですが、そんな時代もあったんだって古書業界の知られざる姿を
知りたい人にとっては、なかなか楽しめる本かも。絶版になっていますが
珍しい本ではありませんし、ネットで安く購入できます。興味ある方は、ぜひ
ご一読を。
スポンサーサイト
コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。